2024/03/17(日)もう気付かずにはいられない

2024年1月~3月に日記屋 月日さんで開催されたワークショップ「日記をつける三ヶ月」(ファシリテーター古賀及子さん)に参加しました。

ワークショップで書いた日記の一部をこちらにも公開します。

 

ーーー

 

最後のワークショップの日。一番初めの日記に書いた青いフラットシューズを履いた。家を出る時にボールペンが見当たらなくて、駅の売店で税抜き98円のを買う。売店の人が外袋の封を開けてくれ、中に入っていたボールペンだけを受け取った。

 

柔らかな青空に今日もBONUS TRACKが映える。前回のワークショップの日に撮り損ねた青空とBONUS TRACK、今日こそは写真に収めたい。鞄からおもむろにスマホを出してカメラアプリを開く。写真を撮るという行為に慣れず、ささっとてきとうに1枚撮って終わりにしてしまった。

 

ファシリテーター古賀及子さんの「お互い同期として今後を見守りましょう」という言葉が嬉しい。皆さんどうか見守らせてください。ワークショップも打ち上げも楽しみ、別れを惜しみながら帰路につく。

 

家へ着いて荷物を床に置く。さっきまで沢山の人と話していたのに、急に一人になってしまってそわそわする。このあと夜寝るまで静かな家にいるなんて寂しい。耐えきれずもう一度外へ出た。

 

公園や川沿いで皆の日記を読み返したいような気持ちだけれど、もう夕方だ。ずっと外にいるのは冷える。打ち上げで沢山お茶を飲んだからカフェという気分にもならず(打ち上げに予約して頂いたレストランではお冷ではなくアイスティーが出され嬉しかった)、居酒屋かバーで酒を飲むことにした。

 

しかし当てがない。コロナが流行ってから一人で飲み屋へ行かなくなってしまったし、よく友人と行く居酒屋は一人席の記憶がなくて入りづらい。

 

駅前のガラス張りの明るい店は気分じゃなくて、普段立ち寄らない通りを歩く。駅から離れると次第に車も人も少なくなった。ヒールのない靴が柔らかい足音をたてる。夕暮れと春風が穏やかで寂しい。

 

アンティークショップの店頭でこけしが売られていてつい足を止めた。ワークショップの参加者にこけし好きの方がいたのだ。今までだったら気に留めていなかったけれど、もう気付かずにはいられない。これからこけしに気付くたび、ワークショップのことを考えるんだろう。寂しさを拭った。

 

ぐるぐると街を歩いて、店を選り好みしたり予約でいっぱいだと断られたりした。気づけば空は暗く、歩き出してから随分と時間が経っている。おろしたての靴で足が痛い。

 

意を決してパートナーFの友人A君が働いている居酒屋へ向かった。Fとは喧嘩中だから、共通の知人に顔を合わせるのはなんだか気まずい。A君にも気を遣わせてしまいそうで嫌だったけれど、もう他に行けるところがない。

 

カウンターに座ろうとしたところで、キッチンにいるA君と目が合った。ビールを頼む。珍しく一人で来た私にA君は気を遣ってくれる。私もうまく返せればいいのだけれど、一人で飲みに来ることなんて普段ないから何を言っても気を遣わせてしまって申し訳ない。喧嘩しているFのことはこれっぽっちも考えていなくて、日記を一緒に書いてきた仲間のことで頭がいっぱいなだけなのだけれど。

 

日記を読んだり今日を思い出したりしながら二杯目のハイボールを飲むうちに、お腹がいっぱいになってきた。それに眠い。ゆっくりだらだらと過ごしたかったけれど、早々に退散することにした。

 

あくびが止まらなくて涙目で会計を済ます。帰るの?またね、と後ろからA君に声をかけられ、振り向きざまに涙が落ちた。喧嘩して感傷に浸っていると思われたら嫌だけど、忙しそうで弁解もできずに店を出る。

 

家へ向かいながら考える。ワークショップが終わった。これからも日記を書いていきたいけれど、15人以外に見せることを考えるとそれだけで少したじろぐ。 

 

日記にはFのことをたびたび書いていたが、Fに日記を見せたことはなかった。ただZINEを作ったり公開する前には読んでもらいたいという思いがある。

 

さていつ喧嘩を終わらせようか。喧嘩が終わった先にあるのがもし別れだとしたら、彼は私の日記を読んでくれるだろうか。

 

やっぱりそのうち考えることにして、眠るまでまた皆の日記を読み返した。